STORY

建てて終わりの仕事ではなく、
長く続くものを。
日本でも普及が進む、
PFI事業。

PFI事業

「その仕事が、
誰かの未来になる。」
スペシャルムービー

INTERVIEW現場取材

建てて終わりの仕事ではなく、
長く続くものを。
日本でも普及が進む、PFI事業。

PFIとは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を行政と民間が連携して事業を行う新しい手法です。民間の資金、技術を活用することで公共が直接実施するよりも効率的かつ効果的に公共サービスを提供できる事業として期待されています。今回、佐藤工業の手掛けるPFI事業は富山市中規模ホール整備官民連携事業。地元アライアンス企業等と事業会社をつくり、ホールの整備と維持管理を受託します。

この事業の背景には、多様な芸術文化に親しむことができ、市民ニーズに合った施設をつくりたいという行政の想いがありました。創って終わりではなく、何十年と長く維持できる事業にしていくために。プロジェクトを実現するためのアライアンス企業探しから、事業会社の設立・様々な契約業務など、その仕事は多岐に渡ります。日本でも普及が進むPFI事業。その新しい取り組みが、地域の人たちが再び集う場所をつくり、人と人のつながり、街の新たな賑わいを生み出していきます。

事業開発統括部
PFI事業推進部中井 明日香

取材・撮影:2021年6月

10年、20年と
長く愛される場所に。
PFIはそのための
新たな手法。

PFI事業とは、PFI法に則って発注される公共事業。Private Finance Initiativeといい、民間で資金調達をし、公共事業を行なっていくということが事業の趣旨。例えば、大規模な公共施設整備を行うのに20億円の予算がかかるとして、20億は予算が組めない、10億までなら出せるけど、残りの10億をどうにかして調達したいというときに、民間事業者が代わりに10億を調達し、公共団体は金利、維持管理費と合わせてサービス購入費として10年〜20年かけて支払う仕組みです。これにより公共団体は、大きな予算組みで事業を行うことができること、維持管理を含めた業務の一括発注によりコストダウンができることなどがこの手法のメリットです。

日本ではまだない例ですが、アメリカでは州単位で何百・何千ある橋を一度にPFI事業で改修・建て替え・新築したりしています。何億・何兆円とかかる事業ですが、ひとつずつ発注し、工事をしていくよりもコストを全体として抑えられるというメリットもあります。

事業として長く続く仕組みづくりを考える。
難しさとやりがい。

PFI事業のプロセスとしては、公共事業のためまず事業者の選定があります。選定の段階で他の企業とアライアンスを組みますが、基本、変わることなく共に事業をやっていくことになるため、その仲間探し、維持管理できる企業を見つけることなどしながら、事業者選定時の提案全体をとりまとめていきます。優先交渉権者に選定されれば、PFI事業を行うための特別目的会社(SPC)を設立。また、その際に発生する会社法に則った手続きなども行います。今回の富山市中規模ホールでいえば、建設期間も含めると約18年、この事業に携わっていくことになります。

事業開発統括部の役割として大きなことはSPCの契約行為、主には融資契約の締結をサポートすることです。案件によって異なりますが、数億から10億程度のお金の借り入れを行うための金融機関との融資契約と、各アライアンス企業との業務契約の締結は一番の山場となります。事業者選定案件のため、いい提案にしようとすればその事業にはお金がかかる。まだ受注できるかどうかわからない段階で、先にお金を決めなければならないという難しい判断が求められる仕事です。

地域からも望まれた仕事だから。
将来を見越して考える。

今回のプロジェクトの背景には、行政の想いもあります。富山市では地域の実情や市民ニーズに適した行政サービスを効率的に提供できるよう、施設の廃止や複合化などの再整備を進めており、芸術文化の催しなどに適した、市民が気軽に使える中規模のホールが非常に限定されることが想定され、この中規模ホールの整備計画に早期着手することになりました。本PFI事業では、多様な芸術文化に親しむことができ、市民ニーズに合った、市民が使いやすい施設をつくる。そういった行政や地域の方の想いを大切にし、事業の計画と施設のプロデュースを行っていきたいと思います。

この事業は、50年、60年と使い続けるためにプロジェクトを長期の視点で捉えた様々な工夫が施されています。施設が建つことによって生まれる街の活気や賑わいだけでなく、それを長く続けていくために。SPCを安定経営し事業を高い品質で実施する体制づくりはプロジェクトの最も重要な仕事と言えます。

街の新たな賑わいの拠点に。

今回のプロジェクトは、駅前で立地はとてもいい場所です。隣接地にはオーバードホール(富山市芸術文化ホール)という大きなホールがあり、本PFI事業ではこの施設との連携を図ることが期待されています。また、ホールの少し先には「富岩運河環水公園」という公園があり、地元住民の方や海外旅行者の人気スポットになっています。本事業はホール整備のためのPFI事業と民間複合施設の開発事業がセットになった街区全体の整備です。今回建設するホールと新たに開発される民間施設を軸に、駅から公園に向けた動線をうまくつくることで、人通りが増え、街自体の活性化につながる。この街区は人を呼び込む装置的な役割を果たすのではないかと考え、施設配置計画をしています。

本事業では、街並みづくりや街の活性化という観点から、PFI事業と民間付帯事業の間に賑わいを生み出す公共通路空間を整備する計画としています。

このように一体的に街区活性化のための計画が立てられる点もメリットです。今回の事業がそれぞれ別々に発注されていれば、その空間はだれも手の出せない無駄な空間になってしまいますが、今回はその土地も街路として整備することで地域の方々の憩いの場としても機能するはずです。

また建物自体も地上から10mの高さに大屋根を設置し街並みとの調和を図るとともに、東・北・西側のホール壁面を木調とガラス張りにすることで文化活動の活気を外部へ発信できるようデザインされています。

たくさんの方に興味・関心を持ってもらう施設をつくることで、多くの人がこのホールを出入りするきっかけをつくる。それが、この街の新たな賑わいへとつながっていきます。

20年先、このホールがどうなっているか。
当事者としてそれを見続けていく。

PFI事業は約20年のロングランでプロジェクトの情報を見ていくことになります。維持管理のことや施工上・設計上の問題点、20年後にどのあたりに問題が出そうといったことや、この先何が良いものとされるのかなどの情報収集ができる場でもあります。20年後、どんな評価になっているかを当事者として関わっていける事業です。建てたものの結果、それは途中経過かもしれませんが、それを間近に見ることができるのはPFI事業の醍醐味でもあります。

建てたら終わりだったこれまでの建設会社の仕事としてみても、今後は建物の改修や修繕といったことがより重要になってくるはずで、PFI事業に関わることは意義のあることだと言えます。地域の方がホールに集い、街が賑わい、新たな文化が途切れることなく育まれていく。そんな未来をつくる、建設会社の新たな取り組みを進めています。

OTHER STORY他のストーリー