PROJECT STORY

人のチカラで、風景をつくる

CIVIL ENGINEERING

土木

CIVIL ENGINEERING

土木

社会的責任が大きく
難易度が高い鉄道工事。
完遂できたのは、
現場の思いが一つになったから。

大崎駅構内補助
第163号線拡幅整備他工事

PROJECT OUTLINE

東京都品川区の大井町地区と大崎地区を結ぶ、重要な地区幹線道路である補助第163号線。道路沿いには区役所や消防署などの公共公益施設があり、震災時には緊急輸送を円滑に行う機能を担っているが、一部の未整備区間は歩道が狭く、車の見通しが悪い道路となっていた。「安全で快適な歩行者空間を確保し、なおかつ緊急車両の通行を円滑にすることで地域の防災性を高める」ことを目的とし、補助第163号線の拡幅整備工事は始まった。佐藤工業が担当したのは、補助第163号線と東海道新幹線・JR横須賀線が立体交差している箇所。JR横須賀線の線路が走る盛土部分に、車道用と歩道用のアンダーパス(道路や鉄道の下を潜り抜ける道路)を構築して、新しい道をつくるための工事であった。

大崎駅構内補助第163号線
拡幅整備他工事 工事概要

施工箇所全景

発進側イメージ

到達側イメージ

PROJECT MEMBER

所長 鈴木

1993年入社
所長として、本工事を担当。高い技術を要し、ミスは許されない難工事を4年間無事故で竣工に導いた。

工事担当 岡山

2018年入社
社会人として初めての配属現場が特殊な鉄道工事であることに緊張しながらも、3年目には最も重要な作業の管理を任されるまでに成長。この貴重な経験から得たものは大きい。

CHAPTER #01

『絶対に事故を起こさない』という
強い気持ちを4年間、毎日持ち続ける。

「さあ、始めるぞ」。真夏の晴れわたる空を見上げて、所長の鈴木は気持ちを引き締めた。
道路拡幅といっても、単に道幅を拡げる工事ではない。JR横須賀線の線路下の盛土部分に、歩道用と車道用のアンダーパス2本を構築する工事だ。稼働している電車の線路直下での工事であり、少しのミスやトラブルが電車の運行を阻害する恐れがある。もし、施工トラブルに起因して電車の運行を止めてしまったら、多くの利用者の足に影響が出る。社会的責任の重さは計り知れない。この現場で大切なことは、工事に関わる全員が『絶対に事故を起こさない』という強い気持ちを持って工事に臨むことだ。そう考えた鈴木は、朝礼やミーティングだけでなく日常会話を通して、思いを一つにすることに努めた。入社後、最初の配属先がこの現場となった岡山にも、この鈴木の思いはしっかりと伝わっていた。良い緊張感がみなぎる中、4年間にわたる難工事が始まった。

CHAPTER #02

本工事に先行して電気設備を移転。
管理する各部署との調整に奔走する。

アンダーパスの構築工事を始めるまでに、まず大きな課題があった。鉄道沿線には電車を走行させるための鉄道施設物が数多く存在する。今回の現場にも電気設備、構造物など膨大な数の鉄道施設物があり、それらを移転しなければ本工事に取り掛かることができない。鈴木は電気設備、軌道、構造物など、それぞれを管理する部署の担当者と協議や調整を行うために日々奔走した。作業内容としては、線路脇に新しい鉄道施設物を施工し、それらに電気系統を切り替えたあと、既設の鉄道施設物をすべて撤去していくというシンプルなものだが、電車の運転を妨げずに進める必要があるため、作業時間は夜中に限られる。関係各所との繁雑な協議や調整、作業時間の制限もあり、結果として4年の工事期間中で、最初の1年9ヵ月がこの鉄道設備物移転にあてられることになった。

信号用横断管路工
横須賀線上下線を横断して、ヒューム管(φ300 2条 1段)を開削工法にて敷設
送電用横断管路工
横須賀線上下線を横断して、鋼管(φ200 2条 1段)を推進工法にて敷設 
CHAPTER #03

トラブルへの対応が信頼につながった。
本社・支店と現場が一体となる姿は佐藤工業ならでは。

鉄道設備物の移転が終わり、いよいよアンダーパスの構築工事がはじまった。この工事で一般的に用いられるのはHEP&JES工法という技術である。HEP工法とは、鋼製エレメント(中が空洞になっている角形の鋼管)を到達側からけん引する施工方法であり、JES工法とは、強度の高い特殊な継手を持つ鋼製エレメントを組み合わせ、エレメント内部にコンクリートを充填することにより、そのエレメントそのものをアンダーパスの構造体にしてしまうという方法である。今回の工事では、エレメントの到達側にけん引装置を設置できるスペースがなかったため、JES工法が採用された。一方からエレメントを押し込むだけになるため、所定の位置に正確に設置するのが難しい工事になる。そんなJES工法を使った、歩道用アンダーパスの鋼製エレメント推進工事が始まるその日、トラブルが起きた。一本目のエレメントを押し込もうとしたとき、直前まで稼働確認ができていた機械が故障し、動かなくなってしまったのだ。原因は何なのか、再発しないためにどうするのか、発注者からも当然対策を求められた。機械トラブルだったため、本社からの指導に加え、機電職員を常時配置してもらうなど、万全の対策を行うことで、作業は再開。その後1ヵ月間は、本社・支店から応援が来て交代で現場立会も行われた。その一連の姿勢は発注者から高く評価していただき、あらためて佐藤工業への信頼が深まった。「本社、支店と現場が一体となって工事を完遂させようとする真摯な姿勢は、佐藤工業ならではだと実感した」と鈴木は話す。

JESエレメント(歩道部基準管)
JES推進発進準備全景
CHAPTER #04

終電通過から始発通過までの4時間が勝負。
超難易度の工事に万全の体制で臨む。

歩道用アンダーパスの工事再開後、一ヵ月遅れて車道用の工事も始まった。車道用アンダーパスの上部は土被りが50cmと線路に近く、土被りが200cmあった歩道用と同じやり方はできない。工事はレールの下の枕木を撤去し、掘削、そこにエレメントを推進させ埋め戻し、枕木を復旧させたうえで地固めをするという流れだが、これを終電後から始発電車が走リ出すまでの約4時間で終わらせねばならない。発注者側からも『難易度の高い工事』と指定されていた。通常の工事では施工計画を立て、それを実施するという流れだが、今回鈴木は施工計画をもとに、まずデモンストレーションを行った。各作業に要する時間をタイムスケジュールとして組み立ててみたが、予想以上に時間がかかる。「どうすれば時間を縮められるか」知恵を絞る。使用する重機の配置や導線、作業の進め方を何度もシミュレーションし、徹底的に無駄を省く。そうやって試行錯誤を繰り返し、ようやく時間内に収まることとなる。一分の遅れも許されない状況の中、こうして車道用アンダーパス推進工事の準備が整ったのだった。

JESエレメント(歩道部基準管)
JES推進発進準備全景
CHAPTER #05

一度も列車の運転を阻害することなく
全63回、5ヵ月にわたる難工事を完遂する。

終電が通過した。すぐにレールの高さや位置を事前計測する。鉄道工事では、工事の前後でレールの高さが24㎜ずれると電車を止めなければならないという決まりがある。電車を止めないためには、作業の前後でレールの高さに6㎜以上の差がでないよう徹底して管理する必要があった。この頃、入社から約3年経った岡山は工事管理者となり、この作業の責任者として現場を任されるようになっていた。工事の前後で、レールの高さをミリ単位で管理しながら、電車の運行に影響がないよう工事を進める作業は相当に神経をつかう。毎日始発が走るとホッと胸をなでおろす、そんな日々が続いた。この作業は全63回繰り返され、約5ヵ月後に無事に終わることとなる。もちろんこの期間中、一度も電車の運転を阻害することはなかった。この工事が無事終わったとき、岡山は「全員が想いを一つにして工事を行えば、どんな困難も乗り越えられる」ことを実感し、そして今まで経験したことのない大きな達成感を味わった。

CHAPTER #06

現場の全員がベクトルを合わせて
チームとして作業したことが結果となる。

今回、非常に難易度の高い工事を無事故無災害で終わらせることができた。その要因は何だったのか。所長の鈴木は、自社の社員だけではなく工事の最前線で働く作業員とも可能な限り直接会話し、風通しの良い環境を築くことを最も大切にしてきた。「日頃の会話を大切にすることで些細な変化に気づき、この先起こりそうな事故やミスを察知し、事前に防ぐことができる」と考えたからだ。岡山も「鉄道工事には特有のルールが多数ある。現場で働く全員にそのことを徹底させるため、会話を大切にし、みんなの心を一つにすることに注力した」と、コミュニケーションの重要性を語ってくれた。鉄道工事では、些細なミスが大きな事故に直結することもある。所長以下、工事関係者全員が同じ目標に向かい、一つのチームとなって作業に臨むことができたからこそ、「事故0」を実現できたのだ。

施工管理にとって、工事が無事に終わったときの達成感や発注者から信頼を得られたときのやりがいはもちろん大きい。だが鈴木は言う。「何よりも、この道路を通る人たちから『便利になった』『これで安全に通れるね』といった声を聞けたときが最高にうれしい」と。以前の車道は、大型車両がすれ違いできず、歩道にいたっては自転車1台が通れる程度で、車いすの通行にも支障をきたしていた。そんな道を、今では人々が快適に、そして安全に利用している。私たちの仕事は、人のチカラで、新しい風景をつくること。この街に生まれた、この新しい風景は、これから地域の人々の生活に大きく貢献していく。

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